今回はPAにおけるヘッドフォンについてお話しします。
PAエンジニアがヘッドホンを使うシーンとして、まずリハーサルスタジオがあります。FOH卓を本番通りに組みますが、本番を想定した音作りを行います。
そこで注意すべきことは、リハーサル後にメンバーがリハーサルの録音物を聞くので正確なミックスをすることです。正確なミックスとは、メンバーが意図するアレンジや音質感で録音する事。そのため、ロー、ハイが出過ぎないフラットなヘッドホンを選んでいます。
ただ、コンサートの現場に持っていくヘッドホンは考え方が別です。現場では「飛ばないこと」が最重要! これに尽きます。確認ミスでヘッドアンプが上がりすぎてることもあり、そういう時にキューのチェックをしようとヘッドホンを繋げると一発で飛んでしまうこともあるんです。
あと忙しい時にはヘッドホンを投げてしまうこともあるので(笑)、簡単に壊れないものがいいです。だから僕はミックスを的確に捉えるヘッドホンと現場用の頑丈なヘッドホン、この2つを用意しています。
スタジオでの定番ヘッドフォンにSONY MDR-CD900STがありますよね。この業界に入った当時は癖がなくいい音だなと思って使っていました。ただ現在では、ロー、ハイともに少し出過ぎていると感じていて、回線チェックに使うのがいいなと思っています。
MDR-CD900STはそう簡単に壊れないし、ユニットもしっかり供給されているので壊れてもメンテナンスしやすいですしね。
現在、ミックスにはKRK KNS8400を使っています。ヘッドフォンを購入する時は、リファレンスCDを持ち込んで売り場に並んでいる全ての製品を試すんですが、なかなか自分に合うものが見つからない。音が作られ過ぎているのが多く、自分の肌に合わないことが多いんです。でも、KNS8400はフラットな音で気に入りました。KRKの企業理念が好きだったこともあります。
ただ、仕事においては、僕はスピーカーとの距離や空間というものを大切にしたいと思っているので、ヘッドホンには傾倒しすぎないようにしています。ヘッドホンはあくまでチェック用。スピーカーが振るわす空気。その空間の中で音楽を聞くことを大切にしています。 |